国庫に帰属させるためには、家庭裁判所に対して「相続財産管理人」の選任を申し立てます。相続財産管理人が選任されれば、この者が遺産についての生産を行い、残余財産について国庫に帰属することになります。
相続財産管理人選任の申し立ては、相続放棄をしたものや被相続人についての債権者等が行うことができます。遺産の状況によっては、申し立て時に予納金(100万円程度)を求められることがあるようです。予納金が大きな壁となり、誰も申し立てを行わないケースも多いようです。
また、相続人全員が相続放棄をした場合であっても、元相続人は、相続財産管理人が選任されるまで、放棄した遺産について管理する義務を負っています。したがって、建物等がある場合は倒壊しないように適切に処置・管理する必要があります。建物の倒壊や放置によって周辺に被害が発生した場合は損害賠償責任を負うことがあります。なお、元相続人に対して固定資産税の請求が行くことはないようです。(山形市の場合)
以上のように、相続放棄しても、元相続人には遺産の管理義務が課されます。この義務から解放されるためには相続財産管理人が選任される必要がありますが、多くの場合は、元相続人が申し立てない限り相続財産管理人は選任されないと言えます。
また、相続放棄後に不動産について買い手が現れたとしても、すでに相続放棄をした元相続人に売却の権利はありません。相続放棄を撤回して不動産を相続・売却するということも認められません。
相続放棄をする場合は、不動産売却の可能性等を不動産業者と相談し、慎重に検討する必要があると考えます。
supervision:行政書士さんべ事務所 三部 浩幸